「視線入力アート」の世界の広がり~振袖の展示会~
8月26日のブログに「視線入力アートの世界の広がり」について書きました。
「視線入力アート」の世界の広がり: 山ねこ工作室のブログ (cocolog-nifty.com)
今日は、その続編です。
「視線入力アート」は島根大学の伊藤史人助教が開発された
「視線入力訓練ゲーム EyeMoT 3D シリーズ」の中の
「センサリー」の「お絵描き」というアプリを使って描かれています。
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重度障害児・者支援アプリ EyeMoT Sensory(センサリー) - ポランの広場|福祉情報工学と市民活動 (poran.net)
全国にたくさんの「視線入力アーティスト」がいらっしゃって、
みなさんいろんな工夫をして、アクセサリーや雑貨などに加工され、
商品として販売もされていますが、
「振袖」という形になったのは、多分、世界初でしょう!
「りんさんの視線入力アートが振袖になった」という三浦さんからの情報を得て、
9月6日、山ねこも私も少し緊張しながら、ワクワクして出かけました!
成人式に着物を作っていない私にとって、着物の展示会に行くなんて人生初です。
佐沼屋呉服店 2024年9月催事_一般HP (sanumaya-kimono.com)
お店に着くと、着物姿の人たちが出迎えてくださり、
場違いかなと気後れするようなところもありましたが、
受付を済ませた後、美味しいお茶と和菓子をいただきながら、
接客担当の方と少しお話できました。
不思議なことに、お話をしていると緊張感はほぐれてきました。
会場にはいくつかの展示コーナーがありましたが、
「りんさんコーナー」を見せていただくのが来店の大きな目的であることは、
事前の申し込み時に伝えていたので、
すぐに、「りんさんコーナー」に案内していただけました。
そこには「りんさんコーナー」担当の社長さんがいらっしゃいました。
はじめましてのご挨拶の後、
りんさんとの出会いや振袖にすることになった経緯やご苦労談など、
お話を伺うことができました。
着物として仕上げる前段階は、誰もがご存知のように「反物」にする必要があります。
「りんさんのアート作品2点」をどんなふうに反物にしていくかは、
職人さんたちとたくさん意見交換されたそうです。
一番優先されたのは「りんさんの原画を忠実に再現すること」だったそうです。
「二十歳の振袖」はどの部分を抜き取って反物にするか悩まれたそうです。
確かに、抜き取り方次第で仕上がりの印象は変わるだろうなと思います。
その道のプロの方たちだからこそ、
良い仕上がりをイメージした意見交換を重ねられて、作られたんだなと思いました。
「菜の花畑」は黄色の色合いに関して、忠実な再現が難しかったそうです。
「黄色」と言っても濃淡があります。
反物の黄色はりんさんの原画のような薄目の黄色が出しにくく、
濃い黄色になってしまうそうです。
それでも、飾られていた振袖は原画と変わらない黄色だったのを見て、
みなさんのご苦労と共に、職人さんたちのりんさんへの想いを感じ、感動しました。
また「菜の花畑」は黄色以外のところが白色です。
原画のまま白色にする方法もあったようですが、
りんさんやこの振袖を着られる方が幸せになるようにという願いをこめて、
四つ葉のクローバーの地模様を入れたそうです。
そのお話にも感動しました。
「視線入力アートを振袖に」という取り組みだけでも感動的なことなのに、
こうした製作過程でのエピソードを伺い、
ものづくりの原点に触れさせていただけて、私の心は揺さぶられました。
「りんさんの成人式のために着物を作る」という三浦さんが
岩手から茨城の龍ヶ崎の「佐沼屋呉服店」にたどり着かれたことが、
佐沼屋さんのこの取り組みに繋がっていったことにあらためて感動しました。
ステキな歴史は、こうして「ご縁」で紡がれていくんですね。
この「りんさんアート」の反物で、
車いすユーザーの方などが「二部式」にしてほしいという希望があれば、
「二部式」で仕立てることもできるそうです。
「りんさんコーナー」に展示してあった「二部式」の着物の解説もしていただきました。
車いすユーザーの方たちの中に「着物を着たい」という方たちがいるのは知っていますが、
「二部式」がどんなふうになっているのかは知りませんでした。
また、帯がどのようになっているのかも知りませんでした。
車いすと言ってもいろいろなタイプがあり、ご本人たちの実情も違うため、
社長さんによると、帯は何年もかけて、たくさんの試行錯誤をしてきたそうです。
ご本人たちの実情に合わせて、着物や帯を作るというのは、
並大抵のことではないと思います。
試行錯誤の結果、着物や帯が仕上がった後も、
ご本人の姿勢等に配慮した着付けのしかたも重要だとおっしゃっていました。
「ご本人が美しく輝けるようにという想い」が作り手の一番の想いなんですね。
社長さんのお話を伺えば伺うほど、
全国にたくさんある呉服屋さんの中から、
三浦さんが佐沼屋さんを選ばれた理由がわかるような気がしました。
社長さんは、ご自身のアート作品を着物にしたいという方がいれば、
相談にのるとおっしゃっていました。
佐沼屋さんにとっても、りんさんとの出会いが新たな挑戦となり、
次なる挑戦になろうとしているんだなと感じました。
「視線入力アート」の世界の広がりは、
「りんさんと佐沼屋さんとの出会い」から、
次なる世界の広がりに繋がっていきそうです。
社長さんのお話を伺っているだけで、ワクワクしてきました!
私のテンションがどんどん上がっていく中、山ねこは静かに任務を果たしていました。
お店の了承を得られたら、三浦さんと「ビデオ通話」をすることになっていたのです。
山ねこは自分のiPadで「りんさんコーナー」を順番に撮影しながら、
りんさんと三浦さんに「ライブ中継」をしていました。
山ねこ「グッドジョブ」です!
三浦さんによると、りんさんは「ライブ中継」をとても楽しみにして待っていたようで、
それが、りんさんの満面の笑顔と大きな声から伝わってきました。
ビデオ通話ができたことで、りんさんには社長さんともお話していただけました。
掲載した動画は短いですが、ビデオ通話中、
終始、りんさんの賑やかな声が響いていました。
自分のアートが振袖になった誇らしい気持ち!
私も胸が熱くなりました。
私たちの来店時間に「茨城新聞社」の記者さんの取材も重なっていたので、
りんさんたちと記者さんも画面上でお話されていました。
「りんさんの2点の振袖」と「社長さん」と「iPadに写るりんさんと三浦さん」を
記者さんが撮影されていました。
山ねこが手に持っているiPadの画面に、りんさんと三浦さんが写っています!
こんな記念撮影ができたことも、嬉しかったです!
「繋がりたい想い」があれば、実現できるんですね!
三浦さんからは、スクショした写真を送っていただきました。
お店にいながら、りんさんたちとこんなやり取りができたのも楽しかったです!
画質が少しぼやけているのは、こちら側の通信状況が悪かったからのようです。
社長さんと私が並んでいる写真は姿がよく見えないくらいぼやけていますが、
理由もわかっていますし、おもしろい写真だなと思って、掲載しました。
こうして、山ねこも私も、充分すぎるほど楽しい時間を過ごさせていただいたのですが、
実は、私はもうひとつ果たしたい「任務」がありました。
「重度障害児・者による視線入力アート2024」の本と
りんさんの絵が表紙になった「ふみくら」という本の紹介でした。
【2024年版】重度障害児・者による視線入力アート~作品&人生ストーリー集~ | ポランの広場|福祉情報工学と市民活動 (poran.net)
年刊誌『ふみくら』 - bungakunokura ページ! (jimdofree.com)
社長さんはどの本もご存知ありませんでした。
社長さんはりんさんの描画している様子はよくわからないとのことだったので、
本の中に掲載されている「りんさんのページのQRコード」を紹介し、
動画を見ていただきました。
社長さんは、りんさんが絵を描いている動画をご覧になって、
よりいっそう感動されているようでした。
店員さんたちもご興味を持たれたので、
「センサリーのお絵描き」のアプリの構成を簡単に解説し、
パレットの中から好きな色を選んで描いていらっしゃるということをお伝えしました。
この本には、りんさん以外のアーティストのみなさんのページにも
ご本人のエピソードや描画している動画が見られる「QRコード」が掲載されていて、
視線入力のことを知らない方たちにも知ってもらえるので、いいなぁと思います。
社長さんに「重度障害児・者による視線入力アート2024」の本の購入先を問われたので、
ネットで購入できるサイトも紹介しました。
重度障害児・者による視線入力アート | エルピス・ワン (elpis.works)
記者さんからは視線入力をやっている人たちはたくさんいるのかと問われたので、
この本に紹介されている65名以外にも全国にたくさんいますとおこたえしました。
記者さんは視線入力のことをご存知なかったので、
伊藤さんの「ポランの広場」や本の紹介ができて良かったです。
私の解説は充分だったかどうかわかりませんが、
こうしてお伝えできる機会を得られて良かったと思いました。
「りんさんコーナー」には三浦さんからお借りになったという
たくさんのパネルも掲示してありました。
「りんさんコーナー」には「りんさんアートの帯留め」も並んでいました。
「りんさんアートの帯留め」をつけていらっしゃる店員さんもいて、
「めちゃくちゃ気に入っています!」と自慢げにおっしゃっていました。
その店員さんは、私がつけていた「りんさんアートのペンダント」に気づかれ、
「いいなぁ」とおっしゃっていましたし、
社長さんは私が使っていた「りんさんアートのボールペン」を見て、
「いいなぁ」と目を輝かせていらっしゃいました。
こうして身につけているものを褒めていただけると、
りんさんの想いがみなさんに伝わっているなぁと感じ、私まで嬉しくなります。
りんさんのおかげで、私たちは「人生初の非日常の世界」を味わい、
楽しく、有意義な時間を過ごすことができました。
視線入力アートの作品は今までにも見せていただいたことはありますが、
りんさんの視線入力アートが振袖になり、
展示会という場で実物を見せていただけたことに、心から感謝しています!
りんさん、ありがとうございました。
りんさん、またお会いできる日を楽しみにしています。
「りんさんコーナー」でたくさん楽しませていただいた後、
予定していなかったのですが、初体験をしました。
京都から出展されていたお店の展示コーナーで、
お店の方が選んでくださった反物と帯を試着させていただいたのです。
反物なのに、折りたたんだり、着せかけたりしていただくだけで、
まるで、着物を着ているかのような姿になっていくのです。
私も山ねこもビックリしました。
こんな初体験ができたのも、りんさんのおかげです。
「知らない世界を知る」って、やっぱり楽しいですね!
私は昔も今も着物を着る機会はありませんが、
冒険するような感覚で、楽しい時間を過ごすことができて嬉しかったです。
この着物の展示会は、9月9日まで開かれています。
来店するには申込みが必要ですが、
「りんさんのアート作品2点」の振袖はもちろん、
ステキな着物や帯などが展示されているので、
ぜひ、いろんな人たちに見ていただきたいなぁと思います。
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車椅子をご利用の方へ - 佐沼屋呉服店|振袖 (sanumaya-furisode.com)
今朝(9月8日)の「茨城新聞の朝刊」に
佐沼屋さんと三浦さん親子を取材された記者さんの記事が掲載されています。
記事によると、りんさんコーナーのパネル展示は展示会開催中の9日までですが、
振袖は9月9日以降もお店で見られるようですし、
購入やレンタルもできるそうです。
新聞記事はブログには掲載できませんが、
記者さんによると、Web記事(有料)が出るようなので、
ぜひ、チェックしてみてください。
(追記)
ブログを公開した後、ネットをチェックしたところ、
茨城新聞の記事がWeb公開されていました。
全文読むことができます。
【茨城新聞】「視線アート」で振り袖 龍ケ崎の呉服店制作 重度障害女性が描き、絵柄に 茨城 (ibarakinews.jp)